覚書

好きな事用 主に映画、小説、漫画など

37冊目「ソロモンの偽証」宮部みゆき

宮部みゆきは中学生のころから好きで、私の母も好きで、ほとんど読んでいます。

好きな作品はたくさんあって「長い長い殺人」とか「蒲生邸事件」とか、有名どころではないやつもお勧めしたいなと思ったんですが、とりあえずは最近のをと。

 

主人公は中学生の女の子。ある雪の朝、学校へ行くと、クラスメイトの一人が学校で自殺したとわかる。その死をめぐって、錯綜する人々の噂。自殺なのか、他殺なのか、いじめはあったのか。教師、マスコミ、警察、カウンセラー。殺しを見たという謎の投書、疑惑の不良、とにかく振り回される主人公たちクラスメイト。

そして、決意します。自分たちで、この事件の裁判を行うことを。

 

宮部みゆきがいつもすごいなあと思うのは、ブレイブストーリーもそうだったんですが、下地を固めるのに本当に余念がないんですよね。

ブレイブストーリーなら異世界にトリップ後、この話なら裁判開始後が、まあメインタームなわけで、普通そこのボリュームをぐっと多くして、あとは多少穴があっても読者は気付かないはずなのに。

メインに突入するまでの地盤固めがすごい。映画にもなっていて、もちろん映画版は裁判メインにはなっていますけど、その裁判のために描かれる人間関係やエピソードのひとつひとつのち密さが、すげぇ、としか言いようがない。

 

あと、学校内の子供同士の交流もうまいです。この人何歳なんだ、ていつも思う笑

ご本人がゲームオタクなだけあって、中2病要素も見え隠れするんです。それがなんか個人的には嬉しい。ただのお堅いミステリ、ヒューマンドラマじゃなくて、そういうヒロイックでドラマチックな演出もちゃんとちりばめられている。

 

印象に残っているのは、神崎がいじめにあってた子の気持ちを裁判で述べる部分です。何故か泣けた。歯を食いしばりながら泣けた。自分はいじめられた経験はないんだけど、「誰かが自分の思いを叫んでくれる」という事象に泣けた。

 

ボリューミーですが、一読の価値はありです。気合い入れて読んでください。ちょっと重いわ、っていうひとはブレイブストーリーを。もっとワクワクドキドキがいい!ていう方はドリームバスターを。テンプレなミステリがいい!ていう方は長い長い殺人を。

 

いや、本を読むのは、という方は映画見てください。少しものたりないですが、世界観は味わえます。

 

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36冊目「天使の囀り」貴志祐介

同じ作者さんは避けてたんですけど、でも好きだからもういいや笑

 

貴志作品で一番好きかもしれない。決めがたいけど。

 

主人公は女の人です。恋人が、秘境で文化人類学や動物の研究なんかをしているんですが、その恋人からの手紙から話は始まります。その手紙の内容がじわじわと変異していくのに違和感を覚えて間もなく、その恋人が突然自殺します。自殺するような人ではなかったとその死に疑問を持つ主人公。

調べる手がかりは、その手紙に出てくる、奇妙な猿。人間を恐れずに、なぜかにやにやと笑って殺されていった猿。その猿を調べているうちに、日本でも不可解な自殺が起こり始める。

 

グロいです。でも、そのグロさに紛れないストーリーとドラマがある。私は「リング」もリスペクトしてますが、この本もものすごいリスペクトしてます。

こういう奇病モノって、たいてい謎解きがメインで、死ぬ→調べる→やっつけるの流れがほとんどなんですけど、これは違う。

もちろん主人公は謎を解いていくしその解決策も探すんだけど、それ以外にもちゃんとドラマ性がたくさんあるんです。宗教だったり、恋愛だったり、安楽死問題だったり。

普通にめっちゃ怖いし。笑

 

とにかくホラー好き、グロ大丈夫、でもそれだけなら物足りないという私の様に欲張りな方は絶対楽しめるはずです。

 

もっかい読みたくなってきた。

 

 


 

35冊目「しあわせは子猫のかたち」乙一

これは本としては「失踪HOLIDAY」という短編集で中学生の時に読みました。

乙一さんはどっちかっていうとホラーのイメージが強くて「ZOO」とか「GOTH」とかグロいのはとことんグロくてファンの私でさえ「ああああああ」てウツになることもしばしば。

ひどい殺人した人の愛読書が乙一さんでやり玉に挙げられて責められている時もありましたが、私は本当にこの人の泣ける話を押したいです。

もう感動する話は本当に本当に泣けるんですよ。あったかくて悲しくて泣ける。

この「しあわせは子猫のかたち」もです。

男の子が主人公です。引っ越した先の家には、どうやら幽霊がいるらしく。奇妙な幽霊との同居生活の中で、わかること。

 

乙一さんは一人称がすごいうまい

柔らかいかたりくちで、奇妙な出来事が連なって、あったかくて泣ける。

今回はこれだけ書きましたが、他もおすすめです。「失はれる物語」とか「君にしか聴こえない」とかこのあたりの短編集は割と温かいお話ばかりなので、グロはいや!ていう人にこそ読んでください。

といいながら私「GOTH」大好きですけどね!笑

GOTH、すごい好き。グロでミステリーだけど。またいつかレビューします。

 


 

34冊目「鹿の王」上橋菜穂子

上下巻なので正確には2冊です。

 
傭兵部隊のようなものをしていた凄腕の戦士、ヴァンが主人公です。戦に負けて奴隷として炭鉱で働いていたんですが、ある日その炭鉱の者達が何者かの奇襲の後発生した病気で全滅。なぜかヴァンだけたすかる。逃げる間に小さな女の赤ん坊をたすけて、というバルサとチャグムの性別逆転かというようなスタートですけど、個人的には精霊の守り人のほうが好きかなあ。
 
なんというか、子供向け感をすごく感じてしまった。多分、ウイルスのことをえらい丁寧に説明してるからだろうなあ。
なんか普通の大人?なら知っとるやろ、ていうことをすんごいキャラ多用して説明するから、話そのものが進まない進まない。キャラ多すぎ。ほんと多すぎ。
そんなことはいいからヴァンを出せ!!!てなりました笑
 
ヴァンはかっこいい!すごい応援したくなる。夢も詰まってる。でもとにかく話が!!進まぬ!!!!!じれる!笑
 
そして読み終わって、一番ガックリしたのは、これ終わらないのよおおおおぜんぜんキリもよくないのよおおおおお上下巻というならもう少しちゃんと区切りが欲しかったよおおおお。
 
と思うのはわたしだけかなあ。笑
 
基本、シリーズものは嫌いで、完結したあとじゃないと読まないようにしているわたしだからこそ引っかかっただけかもしれません。笑
 
読んでみて是非そこんとこどうだったか教えてくださいみなさま。

 

33冊目「火星ダークバラード」上田早夕里

そろそろ大好きな上田さんを。

 

短編集「獣舟・魚舟」で、うわーすげーこの人すげーってなって、このデビュー作を読みました。女の人では珍しい、割とがっつりハードなファンタジー。

女性の書くファンタジーって聞いて上橋菜穂子とか宮部みゆきとか思い浮かべたらだめです。

読んでくださいとしか言えないですが、本当にファンタジー作家さんとしては一番好きです。貴志祐介の「新世界より」とか、それこそ伊藤計画の「虐殺器官」とかその系統に近いです。

シリーズとしては「獣舟・魚舟」「華竜の宮」「深紅の碑文」のほうが好きなのですが、長いんで笑

上田さんはほかにもパティシエ系のお話も出してますけど、こっちは別にそんなに!笑 何を求めて読むかですけど笑

 

あんまり書評になっていませんが、とにかく好きなので熱意だけお届けします。笑

 


 

32冊目「舟を編む」三浦しをん

本屋大賞ノミネート、そんで映画にもなってますね。

舟を編む、てつまり、辞書を作る話です。編纂、ていうくらいなので、本を作るのは確かに「編む」ていう。

ドキュメンタリーって感じです。本が大好きな青年、そっと支える恋人、尊敬する先生、仲間たち。

プロジェクトXみたいだな、と思いながら読みました。

私は大学で古事記の研究をしていたし、辞書というか、本を作る手伝いはわりとしたことがあるんですが、だからこそあんまりピンときませんでした。

たぶん、こういう世界を中途半端に知らない人のほうが面白く感じるのかな。

言葉に関しては、そりゃあ私自身めちゃくちゃこだわりがあるほうだし、辞書も大好きです。

中学高校大学、暇があれば辞書読んでましたね。まじで。

古語辞典広辞苑も漢和辞典ももちろん国語辞典も。

そんな私だからこそピンとこなかったのかなあ。なんか専門的な話のほうに興味が行き過ぎて、肝心な人間模様とか心理描写にあんまり入り込めなかった。

時折出てくる言葉の解説も、知ってる、ていうのがほとんどだったし。笑

 

でも描き方はとてもしっとりと、優しく柔らかく、三浦さんらしい穏やかさでお話が紡がれていくので、好きな人はすごい好きな本なんだろうなあ、と思いながら読みました。

余談ですが角田光代となんか混ざるの、私だけ?笑

 


 

31冊目「年下の男の子」五十嵐貴久

かつて個人的に一大ブームだった五十嵐貴久さん。

多種多様なジャンルを書く人で有名ですね。デビュー作は「RIKA」という激烈なホラーだし、時代物(「安政五年の大脱走」。死ぬほど好き)も書きはるし、と思えばガッキーと舘ひろし主演だった「パパと娘の7日間」の原作もこの人の作品だし。青春物が割と多めになってきたかな。

 

そんな五十嵐さんの恋愛ものです。最近アラサーアラフォーの結婚してない女のひとが話題に上るからチョイスしました。

主人公は、バリバリ働くキャリアウーマン。確か34歳とかだった気がする。んで、会社に出入りする営業の年下の男の子にぐいぐいこられるんです。ぐいぐいぐいぐい。

でも、仕事は、とか年は、とかなんかとにかくありがちな「頭で考える」せいで前に進めないパターン。シリーズになってて、あと2冊?出てるのかな。個人的にはこの1冊目が一番好きだし一番面白いと思っています。

 

五十嵐さんの文章はわりとさくりと読めます。言葉も難しくないし、文も長くないし、キャラもそんなに深い感じに描くわけでもない。王道です。王道だからこそ泣けるし笑えるって感じ。

 

きゅんもあるので、今やってるドラマの「早子先生~」とか「私結婚できないんじゃなくて~」とかが好きな方は、ぜひ読んでみてください。