38冊目「怒り 上・下」吉田修一
いっとき、吉田修一ブームがきて、どどどどーっとこの人のを読みました。
どれもこれも言えることですけど、人間が泥臭いんですよね。いい意味ではなく笑。
明るくて一生懸命で必死に前向きな泥臭い人間ドラマの小説って私読まないんですけど、この人の書く泥臭さはほんとに、なんていうか、友達になりたくない知り合いになりたくない人たち。
でも、この世界のどこかにこうやって真っ黒い何かを抱えながら生きている人がいるんだろうなあ、て思わせるような人を描く。
「悪人」と「怒り」が有名ですが、個人的には「怒り」のほうが好きです。久しぶりに、こぶしを握り締めて泣いた。
この人が主人公、てあまり言えない気がする。誰に寄り添って読んでもいい。
高校生の女の子が、母の男関係でいろいろあって、離島に移り住む。近くの無人島に連れて行ってもらうチャンスがあったから、行ってみるとひとりの青年が隠れ住んでいるんです。正体もわからないその男と交流を続ける女の子。
これがメインの流れですけど他にもたくさん、走っています。
怖い話でした。普通小説読むときって、こいつはどうなるのかなとか、たぶんこいつは幸せになるかなとか、こっちの思惑、あるんですけど入る余地ないですね。
強い話だったなあ。
怒り(上) [ 吉田修一 ]
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怒り(下) [ 吉田修一 ]
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